第２２号　2011.11.21

考える人，感じる人，学ぶ人　── 無責任社会・日本

　日本人ってこんなにも無責任でミーイズム（自分の利益や幸福にしか目を向けない，自己中心主義）になってしまったんですね。昔や未来のことは現実を見ていないのでわかりませんが，戦後のある時期からずっとこうなのではないでしょうか。
　現代の日本人がいかに自己中心主義であるか，例を挙げればキリがありませんが，今回は，その典型的かつ現在進行中のものとして，「沖縄米軍普天間基地移転問題」について考えてみましょう。

　鳩山元首相が「できれば国外，最低でも県外」と発言したのは完全に正しかったはずです。あの時もし日本中が，「よく言ってくれた。沖縄にこれ以上迷惑を押しつけるのはやめるべきだ」とデモや大集会で後押ししていたら，彼ももっと腰の入った行動が取れたかもしれません。
　しかし，ほかの政治家は言うに及ばず，メディアはまるで他人事のような報道（ただしこれはいつものことなので驚きもしないが），国民はどうかというと「実力のない坊ちゃんの思いつき発言」程度にしか受け止めることができず，それを恥じることもしなかったのには改めて衝撃を受け，絶望的で暗い気持ちになったことを覚えています。
　先の大戦中，国土が戦場と化し，激しい戦闘が続いたのは沖縄だけであったし，逆に言えばそのためにいわゆる本土への上陸は避けられたのではないでしょうか。沖縄の人々は日本国民として，最前線に投げ出され，絶望的な戦いを強いられたのです。
　終戦後も沖縄だけが米軍の占領下に置かれ，日本への返還は２７年を経た１９７２年になってのこと。その間の沖縄の人々の様子は想像するしかありませんが，苦しかったことは確かでしょう。そして迷惑施設である米軍基地はほとんど規模を縮小することなく２０１１年にいたる今も，そのままで存在し続け，周辺住民に苦痛を与え続けているのです。
　通算６６年です。人の一生に近い。私たちは，かくも長きに亘り，沖縄の人々に重荷を背負わせて平気でいる。愛国心などという言葉が耳に嘘っぽく浅薄に響くのも当然でしょう。
情けない政治家たちは，今に至るも米軍との約束を重視。名護市辺野古沖への移転にこだわり，諦める気配がない。
　沖縄の人々の主張はほとんど揺らぐことなく「普天間基地の返還」「県内への移転拒否」。拒み続ける沖縄に対し，わが国民ははっきり言って知らん振りを決め込んでいるのです。卑怯だと思いませんか？ 私達のことですよ。
　ではどうすればいいのでしょう。議論は不要です。役に立たない。それはこれまでの延々と続く不毛な話し合いを見ていればわかります。我々日本国民が義務を果たすためにも，また甘えを捨てて国全体が大人になるためにも次の２策のいずれかを実行に移す以外にはありえません。

その１　日米安保条約そのものを全面的に見直し，大幅に改正するか，いったん破棄して新条約を結び直す。アメリカが認めなければ一方的に破棄する。そのリスクは全国民が引き受けるべきです。
その２　もし１がどうしても無理な場合，米軍基地の規模や場所については日本国民が主体的に判断をし，その際沖縄の基地は当然沖縄の県民が許容できるところまで確実に縮小することを約束すること。軍事的な配慮はしつつも沖縄県民の意向はかなり徹底して通さなくてはならない。

日米安保を肯定する限り，どこかの県のどこかの地域が新たな被害地となることは避けられないのです。沖縄の県民のためにも，それ以上に，我々国民が人間としての誇りを回復するためにも，覚悟が必要です。

　以上，素人が，縷縷(るる)述べて参りました。テーマは「沖縄の基地問題」でありましたが，何か「どこかで見聞きしたような話」であると気づいた方も多いと思います。
そう，「原発」もすべて田舎に，地方にありますね。
　「金」で買収し，地方の「雇用創出」に貢献し，その地域一帯の「道路等のインフラを整備」し，「市町村へ固定資産税・法人税など電力会社からお金が入るメリット」と引き換えに危険な施設を押し付ける。沖縄にしたのと全く同じやり口です。
　原発が安全でリスクを十分コントロールできる施設であるのなら，なぜ一番エネルギーを使う大都市に作らないのでしょうか。これほど自分勝手で，明白な矛盾を抉り出せないメディアや専門家，大人とは呼べないような無責任な方々が多いから，今回のような仕儀になるのです。（彼らはいずれも高い所得を得ている面々だということをお忘れなく。）
　さりながら，日本は一応，民主主義国家なのでしょう？したがって反省すべきは第一に我々国民ひとりひとりのはずです。私たち国民はそれが分かった上で，こんなにも静かなのか。
　破綻寸前の年金問題，いまや国家予算の３分の１に達する医療費，歯止めのきかない少子高齢化・非婚化，国の基盤であるはずの第一次産業の衰退などなど・・・問題は山積みです。そして極め付きは国の借金の1000兆円突破。
　そのどれもこれもの根っこにあるのが，個人主義といえば聞こえがよいが，バラバラになった個人の欲望の肯定，単純なエゴイズムを自由という美名の下に可能な限り解放することが先進国の証，進歩・発展の原動力であるとしてきたエセ民主主義の結果なのです。つまり我々の，自分の幸福のことだけしか考えない無責任さが国を押しつぶそうといている。それが今の日本の姿なのです。

　私たちの大切な仕事である教育の分野においても，その潮流は見事に一貫した流れとしてどんどん進行しています。さて，私たちはどうすればよいのか。

＜塾長＞