考える人、感じる人、学ぶ人
　 ── 形式的「仲良しグループ」の演出と「イジメ」はつながっている。

　今年のある時期（正確には覚えていません）から，私の経験から判断して「６R」の生徒達に，心配な行動が頻繁に見られるようになりました。今，それが益々エスカレートしています。私は学校で流行しているのが，そのまま塾に持ち込まれているのだろうと一時は傍観していました。第一，見るからに仲良くしているからです。（ただし，女子同士だけなのは気になっていました。）

（ア）授業終了後，帰る時のことです。板書を写したり，帰る準備が遅れたりする女子を，全員が待っているのです。もちろん，当初の頃は私も微笑ましいことだとむしろ感心していました。これがまず第１点。
（イ）その後，階段を降りて，靴箱にある女子の靴を，なんと先に着いた子が後から来る人の分まで並べているのです。（初めの頃は一人か二人の分だったように思いますが，その数が徐々に多くなっているようです。これも親切と思いやりを感じて，当初は別に悪いことではなく，むしろ良いことのように感じていました。）

　以上，いずれの行動も，普通は人間ならそのうち適切で目立たぬものになるはずだと予測していたし，期待していました。
　ところがです。全く下火にならぬばかりか，固定化し始めたのです。それを受けて，私の考えは即座に決まりました。これから述べることには，いろんな批判があろうとは思います。しかし，最低限，私のような考えをもって，この子達（又は学校でも流行しているなら，この子達の世代）に接し，教育すべきだと憂慮する人もいるのだとお受け取り下さい。
　10／25（水）に６Rに対し，授業時間を１５分ほど使って，次のような話をしました。（それ以前にも忘れましたが何度か軽く注意はしていましたが・・・。）
　『君たちは今の休み時間に，板書を誰も消してくれなかったね。何度も頼んだことがあったにも関わらず，誰かが書くのが異常に遅くて，消すとその人に悪い場合以外，これは一体よいことなのか。他人がしないのに，なぜ自分だけがそういう仕事をせねばならないのか，そんなのイヤだ。というか，そもそも，消してあげておいたら次の授業の先生のためになる，なんて考えつきもしてないのではないかと思います。以前はたいがい誰かが消していました。当時私はそうしている子をほめたことがありませんでした。時代と共にそういう子が徐々に減っていき，いつも決まった生徒しかやらなくなった頃からは，ほめるようにしました。今はヒドイ状態です。頼んでも消さない子が圧倒的に多い有様です。消してくれる生徒はまさに貴重な存在となってしまったのです。
　自分達に身近な教室の中で，はやり言葉を使えば，ボランティア活動が全くできないのに，大人達（役所・学校等）が決めたボランティア活動は内申にも影響するし，それはやろう。── そんな人間は自分の将来をイビツなものに，今からしていることに気づかねばならない。
　板書消しは小さなことです。それすらできない者が上に述べたような行動をとるのは，隣近所の人に声を全くかけない人が，職場ではニコニコして気持ちの悪いほど，敬語（のつもり，実はまちがった日本語）の乱発をするのと似ていませんか。
　また，授業終了後，最後のひとりが帰り支度ができるまで全員が待っていたり，更に玄関先であとから続いて来る人の靴を並べてやったりする「思いやり・優しさ」がもし本物だったら，板書消しを誰一人思いつかない，やろうと思う気持ちが生じないのは，どこか変だと思いませんか。是非考えてほしい。自分の生活の場の中でできないことを，広い社会の中で実践できるはずがないのだから。
　それと，気になるのは世間に充満している「イジメ」との関連です。当グループは，塾内やMy Way内では絶対に「イジメ」は許さないし，「イジメに気づいて放置する教師」も許さないという強い態度は一貫してきたつもりですし，今後ともその姿勢を堅持していきます。
　まさかとは思うけれど，この種のことで気づいたことは，結果的に，たとえ的外れになったとしても，なるべく早く言っておかねばなりません。
　所属する集団の中で，「他の人と異なる言動」をせず，「集団から孤立することを恐れる」ことがイジメを成り立たせていることに反対する人はまずいないと思います。もし，そういう風潮が，６Rの君達にも影響しているのだったら，とても危険なことです。たとえば，みんなが仲良しグループのように見えるということは，それと異なる考えがあっても言い出しにくい，行動しにくいからこそ，深刻である訳です。そしてアッという間に２人が３人，４人になり，やがて全体を巻き込んでしまったら，もう遅いのです。
　次に何かトラブルが発生した時，誰かが大きく傷つくような事態になるからです。常識で判断して下さい。家族間でもトラブルは日常的です。まして，他人同士なのですから，起こることはほぼ確実でしょう。そういうことを頭に置いた上で，「自分」の「言動」を何も恐れず，堂々と決めていって下さい。』
　およそ以上のような内容の話をしました。（細かい表現はともかく，主旨はほぼまちがいなく再現しているはずです。）それで，最後に，「本当は，自分が消してもよい。消したい気持ちもある。でも，誰もしないし，そういう雰囲気でもないし，やっぱりやめとこう。」と思っている人が全くいないなんて信じられない。僕はいると思う。もしいたら，消してほしい。勇気（本当は大ゲサなことばですが）を出してほしい。── その時ひとりの女子が立ち上がって消してくれました。私はうれしかったし，その子のためにも，他の子のためにも，言ってよかったと思いました。

　 以上のような報告を敢えて実在のクラス名をあげてするのには，迷いに迷いました。その後の様子をみていて，「本当に，このクラスの女子達はものすごく仲が良いだけなのかも知れない。」という疑念が生じたからです。にもかかわらず報告に踏み切ったのは，もし，そうであっても，このようなことを御家庭に届けておくことには意義があるのではないかと判断したからです。御批判・御意見などございましたら，どうか遠慮なく御連絡下さい。