第２１号 2008.12.9
考える人，感じる人，学ぶ人 ── 子どもの深夜徘徊
最近，中央・地方を問わず，小・中・高生が深夜に化粧をして繁華街をうろついているのをテレビ報道でよく見かけますが，その背後にある問題をいくつか挙げてみたいと思います。
① 家庭の問題
徘徊する彼等が「深夜になっても帰宅しないことを親が知らない」，「知っていても注意しない，又はできない」，「注意しても完全に無視した行動をとっている」この３つのケースのいずれに当てはまっても，これは現代日本において社会の最小単位である家庭という絆が，脆くもくずれつつあることをはっきりと示しているといえます。
② 他の大人達の問題
深夜に徘徊する彼等の身を案じたり，叱ったり，つまりごく普通に我が子や孫に対するときのように振る舞える自信を持った大人が，日本の津々浦々からどんどんいなくなったことです。これは地域社会・コミュニティーの崩壊を示す典型的な現象ではないでしょうか。逆に，彼らに寄り添う素振りで，未成熟な彼等につけ入り，「性」か「金」を得るために利用する大人は後を絶ちません。ここには，個人の自由尊重のなれの果て，自分が生きるためには（法に触れぬ限り）何をしてもよいという，今の世界を覆っているエゴイズムが感じられます。
③ 若者自身の問題
若者が盛り場をうろついたり，深夜に集団でたむろしたりするのは，内発的な衝動・欲望・夢・寂しさに動かされ「癒されたい」情念が動機になっているのは間違いなく，その意味で，若者も単純に社会の被害者だとは言えません。
④ 彼等を受容する「場」の問題
盛り場・コンビニ・テレビ番組等の深夜営業には，それだけ余分なコスト（特にエネルギー）がかかっているはずなのに，世を挙げて都会・地方を問わず，２４時間体制が益々はびこっています。これらに従事し，生計を維持している大人達にとっては必要なことなのでしょうが，ひたすら便利さを追い求め，多様な欲望に対応していくことが，文明の進歩であると錯覚してきたこの消費社会を私達は真剣に反省して来ませんでした。
⑤ マスコミの問題
正面から真面目に取り組み，社会的，自覚的に反省し，意見を堂々と述べるところはありましたか？ テレビやカメラや写真や記事や短いコメントで，そのまま現実の断片をおもしろおかしく写し取って，視聴者や読者に受け渡すことだけでは，子供の使いと同じです。職業人とは言えないですね。
未成年者が深夜にうろつくという異常な現象も，日常的に目撃するうちに，今の世相では一般的なことだと，やむを得ないものとして肯定しているように思えるのは非常に恐ろしいことです。
なんとかそれに歯止めをかけるためにも是非家庭で，子供が夜外出することについて話し合って欲しいし，不要な外出はさせないようにしっかりと管理をして下さい。自分の子供が人に迷惑をかけたり，犯罪に巻き込まれたりしないように守ってやるのは親の努めであると同時に，親の誇りなのですから。
＜塾長＞